【PAUL GILBERT】ツアー初日のライブレポートが到着!
ポールが歌い、ギターも歌う。
掟破りの長編メドレーから、意外性たっぷりのカヴァーまで。
「すごい!」と「楽しい!」が共存する至福の時間。

「トッテモ、タノシカッター!」
10月21日、20時50分。アンコールに応えての楽曲も含めてすべてのプログラムを演奏し終えたポール・ギルバートは、両手を高く突き上げながらそんな言葉を発し、歓声と拍手が飛び交うなか、東京・Shibuya WWW Xのステージを後にした。去る2月に発売された最新アルバム『WROC』を携えての来日公演第一夜は、彼自身が口にしたその言葉どおり、あくまで楽しげな空気感に包まれながら幕を閉じた。演奏開始から、ちょうど110分後のことだった。
本稿においては、そこでの具体的な演奏曲目については、これから公演会場に足を運ぶ方々のためにも、一斉記述せずにおく。ただ、この夜のショウには「あの有名曲が聴けたから満足」とか「お気に入りの曲が披露されずに終わったからちょっと不満」というような次元ではない楽しさが詰まっていた。

なにしろその幕開けを飾ったのは、約20分間にも及ぶ“Crazy PG Medley”。PGとはもちろんポールのことであり、この奇想天外なメドレーには、彼自身のこれまでのキャリアを彩ってきた楽曲たちがふんだんに盛り込まれている。当然ながらソロ名義で発表された曲ばかりではなく、MR.BIGの代表曲たち、彼が世に出る切っ掛けとなったRACER Xのレパートリーまで登場するのだからたまらない。そこには確実に20曲以上(筆者は曲数をカウントしながら観ていたが、あまりの楽しさゆえに途中で数えるのを忘れてしまった)が詰め込まれていた。
しかもその特大サイズのメドレーには「そんな曲までやってくれるの?」「超重要曲なのに、こんな初っ端にやり終えちゃっていいの?」と言いたくなるような楽曲も多々含まれている。こうした趣向はたいがいショウの中だるみを防止するために演奏プログラムの半ばに設けられたり、アンコールで披露されたりする傾向にあるものだが、彼はこうして冒頭からオーディエンスの期待に応えつつ驚きももたらすようなメドレーを披露することで、「次に何が飛び出すかわからない」というライヴ本来のスリルを強調することに成功していた。

その後、ショウは最新アルバム『WROC』の楽曲(すなわちポール自身がヴォーカルをとる曲)と、インストゥルメンタルによるさまざまなカヴァー曲をほぼ交互に披露しながら進んでいった。オリジナル曲をメドレーでたっぷりと消化し、逆にカヴァー曲をフルサイズで聴かせるという、普通とは逆の発想も面白い。しかも彼がカヴァーするのは、ロック・ファンならば誰でも歌いたくなるような曲ばかり。そのうえ彼はそこで、いわゆる歌メロを弾くのだ。『WROC』の前作にあたるロニー・ジェイムズ・ディオ関連楽曲のカヴァー・アルバム『THE DIO ALBUM』(2023年)では、ディオの声色の使い分けや歌いまわしをギターの音色で再現し、まるでディオが楽器に憑依したかのような演奏を繰り広げていた彼だが、どうやらあの作品で彼は“ギターに歌わせる”という妙技を完全に自分のものにしてしまったようだ。だから「インスト曲の多いライヴはちょっとキツいかも」などと考えている人たちにも心配は無用だ。なにしろすべての楽曲にウタゴコロが伴っているのだから。
もちろん、実際にその演奏は圧倒的な超絶美技の連続ではあるのだが、それに対する「すごい!」という驚き以上に「楽しい!」という感触を味わうことができる。それはステージ上の彼自身が気心の知れた仲間たちとの演奏を、心から楽しんでいるからこそだろう。ちなみに今回のツアーに同行しているのは、ティマー・ブレイクリー(b)とジェフ・マーティン(ds)。説明するまでもないはずだが、ジェフはRACER Xのヴォーカリストだった人物であり、ティマーもしっかりコーラスをとる。だからこのトリオによる演奏は音符同士のスリリングなせめぎ合いばかりではなく、ヴォーカル・ハーモニーにも満ちているというわけだ。それもまた、彼のライヴが楽しげな空気に溢れている要因のひとつになっているといえるだろう。ギターに関する専門的知識を持っていなくても心底楽しめるはずの110分がそこにはあるのだ。

最後に付け加えておくと、この日、会場内が暗転してポールが「TOKYO!」と叫んだのは、時刻が18時59分から19時に変ったまさにその瞬間のことだった。本日の東京公演第二夜、そして23日の大阪公演に足を運ぶ皆さんは、くれぐれも開演時刻に遅れぬようご注意を!
このギター・ヒーローはどうやら、かなり几帳面でもあるようだ。
TEXT:増田勇一
PHOTO:土居政則
【当日券】10月22日(木) Shibuya WWW X
<販売開始時間> 17:00~
<販売席種> スタンディング ¥12,000(税込/入場整理番号付/ドリンク代別途)
<販売場所> 会場の当日券売場にて販売
※販売予定枚数に達し次第終了となります。予めご了承ください。
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